【言わぬが花】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉
日本の諺である。
「言わぬが花」とは、物事は露骨に言ってしまっては興醒めするものであり、黙っているほうがかえって趣があったり、値打ちがあったりするものだというたとえ。
口に出して言わないほうがおくゆかしく、さしさわりもなくてよい。また、口に出さないほうがかえってよいこともあり、余計なことは言わないほうが無難であるということ。
ちなみに、この場合の「花」は、「花のように美しい」の意。一から十まで話してしまったのでは、あまりにも露骨すぎて、趣も何もないとする、日本人の美意識が表現されている。
説明するのが難しかったり煩雑だったりして面倒な場合など、
「まあ、それは言わぬが花ということで……」
と答えると、相手はそれ以上突っ込んで質問できなくなる。角を立てず、婉曲的に拒否できる便利な言い方である。
「稼いでいるのでしょう。月にどれくらいですか」
「奥さんとはどこで知り合ったのですか」
「旦那さんの両親と同居なんて、たいへんでしょう」
などと不躾に聞かれた場合にも、苦笑しながら、
「それは言わぬが花ということで……」とか「ええ、まあ、言わぬが花です」
などと微苦笑しながら言い、かわせばよいだろう。
なお、「言わぬが花」は漢字で「不言花」と書く。格好いいので、是非覚えておいて使いたい。SNSでも使えるのではないだろうか。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。