東 雑記帳 - ラスト寝小便・イン周防大島

東 雑記帳 - ラスト寝小便・イン周防大島

おねしょともいうが、この言葉、使うのがなんだか恥ずかしい。やはり、寝小便だろう。読み方も、「ねしょうべん」より、「ねしょんべん」が似つかわしいのではないか。だが、「しょんべん」では乱暴すぎるし、下品と思われるだろう。
子供は寝小便をするものだが、問題は何歳までするか(したか)だろう。
自慢にならないが、ぼくはけっこう遅いほうで、五歳頃だったと記憶している。

それは生まれ故郷周防大島での冬の明け方。しっこをする夢で目が覚めた。「あっ」と思って、下をさわってみたら、パンツがぐっしょり濡れている。「あああ」。気がついたときはもう遅い。どうしよう。
冬だから、親が蒲団の中に櫓(やぐら)炬燵を入れてくれており、朝方になってもまだ温かった。
パンツを脱いで乾かすことにした。上はネルの寝間着で、はだけていたからか、少ししか濡れていなかった。
隣はいつも母が寝ていたが、その時間にはもう蒲団から脱けだしていた。朝の支度をしていたのだろう。

どれぐらいの時間、こたつで乾かしたかわからないが、やがて、パンツはほんのり湿った程度になってきたので、やめにして、パンツをはいた。後は体温の熱で自然に乾くだろう。
もう一つ問題は、敷き布団だったが、あまり濡れていなかったが、こたつの熱で乾いたためだろうか。こちらは何の小細工もせず、そのままにしておいた。

さて、その日、母からは何もいわれなかった。
寝小便をしたことに気づかないわけはないが、知らん顔を決めていたのだろうか。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。