東 雑記帳 - 割り箸の使い方にも作法があった

東 雑記帳 - 割り箸の使い方にも作法があった

割り箸にはかつて、作法があった。居酒屋や立ち食いそば屋での話である。
箸を使うとき、口の端に箸の裂く側ではないほうをくわえ、利き手で箸の先端近くを開くように外に引っ張る。すると、パチンとかパキッとか、音がして箸が二つに割れるという仕儀である。

ごく自然に、この割り方をする人は、いつもこういう割り方をしているから見事に割ることができるのだろうか。
上品な仕種ではないし、やくざっぽいともいえるが、わざとそれを気取っているのだろうか。あるいは、ただ下品が身についているのか、
それはともかく、きれいな音がするように工夫していて割っているように思えたが、自然にそれが身についたのだろうか。
一、 二度、試したことがあったが、割れるときの衝撃が歯に響く。
やってみてわかったが、一気に割らないとうまく割れないことがある。豪快にではないが、一気に割らないといけないのだろう。
やはり自分には似合わないと思い、似合わないことはよした。

さて、飲食を済ませたら、箸はどうするかというと、二本を束ねてパチンと二つに折るのである。そうしてその後、爪楊枝を使う者もいた。こういう一連の所作が誠に似合う男もいたが、今では見かけなくなった。いる所に行けばいるのだろうか。探しに行きたいとも思うが、たまたまであれ、もしも見かけたらまた報告したい。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。