【来たか長さん待ってたほい】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉
現代では、ドリフターズの加藤茶が、ギャグとしてこの言葉を頻用していたので、耳に残っている人もいるだろう。リーダーのいかりや長介の「長さん」が現れると、かとちゃんがすかさず、「来たかチョーさん、待ってたホイ」と声をかける。リーダーの名前にかけたギャグであることは明白である。
この遊び言葉は、現代の放送作家がつくったものでもないし、ドリフのメンバーの創作でもない。おそらく江戸時代からあったと思われる。
「とうとうおいでなすったか」という軽口。
待ちかねていた事態が来たという思いを込めていう軽口である。
夏目漱石の『道草』に次のような記述がある。
「来たか長さん待ってたほい。冗談じゃないよ。使でも出そうかと思ってたところです」、
比田は健三の兄に向ってこの位な気安い口調で話の出来る地位にあった。
待ちかねた 社内の飲み会で遅れてきた上司に向かって部下が、「来たか長さん待ってたほい」というと、どうなるか。課長の人柄と関係性にもよる。
軽口であるから、対等の相手には使えるが、年上や立場が上の人に対しては使わないほうが無難であることはいうまでもないだろう。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。