東 雑記帳 - エナジー・ドリンクは砂糖湯

東 雑記帳 - エナジー・ドリンクは砂糖湯

小学二年の冬のある朝。いつもより早く目が覚めたが、体中から力が脱けている。頭もボーッするのを通り越しており、動こうとしたらふらふらした。
それでも起き上がって、すでに起きて台所仕事をしている母の近くへ這っていくようにして近づき、訴えた。
「おかあちゃん、ふらふらするーっ」

母はなんと返事したか、覚えていない。
土間に近い畳の上でへたっていると、すぐに母が湯呑みを持ってきて、こう言った。
「これ、飲みなさい。すぐなおるから」
手に持つと湯呑みは熱く、湯気が立っている。
頭はぼーっとしていて、半分寝たような感じ、目も半ばつむった状態で、その飲み物をゆっくりゆっくり飲んだ。
「なんておいしいんだろう」
不思議な飲み物は、これ以上ないほど甘露だった。(この甘露は、今の自分が使っている言葉で、当時の自分が使ったわけではない)

母の言うとおり、それを飲むとたちまち元気が出て、しゃんとした。
その後は、寝直したかどうか、記憶にない。このとき、父も姉もまだ起きていなかった。

当時、わが家の食事は淡泊なものが多く、しかも自身、食は細くはないが、大食でも無かった。日中は他の子供と同じように体を使って遊び回っていた。そして、夕飯の時間は早かったから、早朝には体のエネルギーがすっかり空になっていたのだろう。

同じことはまたその数か月後にも起き、このときもまた、母が前と同じ温かい飲み物をつくってくれ、それを飲んでたちまち元気になったのだった
この二度目のときに、わかった。
母がつくってくれたエナジー・ドリンクは、砂糖湯だったのだった。
摂取すると即、元気が戻るはずである。なんの変哲もない砂糖湯なのだから……。
糖尿病の人などが低血糖に陥ると、氷砂糖や甘露飴を口にして回復するのと同様、自分も砂糖で下がっていた血糖値が上がり元気が回復したのだった。

 

文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。