東 雑記帳 - 豚の心臓を人に移植。豚の性格が移る恐れはないの?
今年一月、米国で世界初、豚の心臓移植が行われたが、移植を受けた男性は二か月後に亡くなった。
それで思い出したのが、近代の輸血が始まる前に英国やフランスで行われた動物の輸血のこと。
犬と犬の輸血に始まり、やがて仔羊の血液を人間に輸血した。輸血の対象者となったのは、性格的あるいは精神的に問題がある人たちだった。
それにしても、なぜ仔羊の血液だったのか。仔羊の穏やかな気性を移すためだった。
それで、輸血した結果は、どうだったのか。
おとなしくなった者もあったが、それは仔羊の性格が移ったからではなく、血液不適合がもたらしたことだった。
しかし、血液を介して性格が移るという考え方は、完全に否定はできないだろう。
昔から、人間において、輸血を受けたら性格が変わったということがあったようで、小説や随筆などにそういう話が載っていることがある。
長期間は続かないようで、「もう二か月たったから、そろそろ元の性格に戻るでしょう」などと、鼎談で暢気に語っているのを読んだことがあった。そうすると、鼎談の一人が、「いやいや、元の性格に戻らないほうがよいでしょう」と応じているから、笑える。
300や400cc程度の輸血で影響が出たという話もある。
心臓移植を受けると、性格や嗜好が変わったり、さらには記憶移植が起きたりすることがあると報告されているが、豚の心臓を移植すると同じことが起こる恐れはないのか。今回移植を受けた男性は亡くなったが、専門家には一笑に付されるだろうが、それが気になる。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。