東 雑記帳 - 高松駅前。靴磨きに靴のかかとに釘を打たれた!!
国鉄高松駅前の靴磨きにはひどい目に遭った。
改札を出て広場に沿って歩いていたら、一人の靴磨きがいて、「かかと、○○○したほうがいいよ」とかなんとか、声をかけてきた。○○○の部分は具体的に何と言ったか忘れた。
気になったからだろう、立ち止まった。
すると、靴磨きが、
「かかとがすり減る前に釘を打ったほうがいい」というようなことを言った。履いていた靴は、この高松出張の前に買ったばかりであった。勤めていたのは家具・インテリアの関係の業界紙で、高松は漆工芸や漆塗り家具の産地だった。取材兼広告取りに初めて高松に来たのだった。
靴は革底で、かかとの部分も皮革だった。かかとがすり減るのは、面倒と出費がかかることである。
それでついて、相手の言うことを聞いてしまったのだろう。
靴磨きは、馬蹄型のかかとに沿って、小さな釘を一定の間隔をあけて何本も打った。12。13本だっただろうか。
「さあ、これでだいじょうぶ」と言って、相手は満足げに微笑んだ。
さて、どうだったか。釘を打っているので、歩くとチャリンチャリンと小さな音がする。舗装によっては滑ることもある。余計な出費もしてしまった。散々だった。
出張からもどったら、すぐに釘抜きで釘を全部引き抜き、ようやくせいせいした。
出社して、靴磨きのことを何気なく話題にした。釘を打たれたことは省いたが、先輩社員のKが、「高松に行くとみな、あの靴磨きに引っかかるんだよね。ぼくもやられた」と、自嘲気味に笑うのだった。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。