東 雑記帳 - 清水坂の食堂、天丼の極小エビに驚いた!
京都で働いていた昭和四八年、ある日、会社の同僚二人と連れだって清水坂に行った。
坂の途中の左右に、観光客向けの店が軒を連ねているのは今と同じだが、当時は土産物や飲食店に間に連れ込み旅館もあった。今はまさかそういう旅館はないと思うが、当時は当たり前のように存在していたのである。
ちょうど昼時で、坂を上がりきる少し手前にある小さな食堂に入った。店内は観光客で混み合っていたが、テーブル席が空いていた。そこに腰を落ち着け、三人とも天丼を頼んだ。間もなく天丼が運ばれてきて、食べ始めたのだが、載っているエビの天ぷらを口にして、驚いた。天ぷらの衣がついたエビは、小さめだが、それでも10センチはあったと思う。それが二尾載っていた。
ところが、三人とも口に入れてすぐ気がつき、顔を見合わせた。えっも、こんなに小さいの? エビの本体は3センチぐらいで、ほとんどが衣という代物だった。
そうか、ここは観光地のお上りさん相手、一見客相手の食堂だったと思い至り、納得した。当時はまだ、こういうことがまかり通っていた時代だった。
そういえば、同行した二人は京都生まれの京都育ちだったが、油断したのか、それとも鷹揚な性格だったのだろうか。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。