東 雑記帳 - 偽物のアジフライがスーパーで売られていた頃
5月のある日、アジフライがブームになっていると、朝のテレビのワイドショウが取り上げていた。アナウンサーかタレントなのかわからないが、若い女性がアジフライの専門店で食べて、「ひと味違うおいしさです」とかなんとかレポートしている。この女性、果たして普段からアジフライを食べているのだろうか。
ネットで調べたところ、去年3月には東京市ヶ谷にアジフライ専門店ができた。この店はアジの水揚げ日本一の長崎県松浦市で獲れた真アジを使っていることが売りであり、人気を集める理由となっているという。
真アジと断っているが、しかし日本でアジというと昔から真アジを指すことが多い。それに今も近所のコープで売っているアジは普通、長崎県のアジである。
とはいえ、アジの産地で食べるアジフライは、静岡県の伊東で食べたアジフライがそうであったように、スーパーのアジフライより格段においしいことは確かだと思う。
先のレボートを家の者も一緒に見ていたが、「アジはアジでしょう」と即座に斬って捨てたが、そのとおりでアジはアジであるけれど……。
最近、近所にあるスーパーのうち一軒では、「メガアジフライ」と名付けた大きなアジフライを売っている。アジの産地はわからないが、真アジであると明記している。
アジフライで思い出すのは、今から15年前頃からだっただろうか、スーパーのフライ売り場で、「おいしいアジをフライにしました」と表示して売られるようになった。あるいは、「新鮮なアジ」だったかもしれない。
家の者が買ってきたので食べてみたが、真アジの味ではない。淡泊で、青魚のうまさとは明らかに違う。青魚特有の濃厚さもなく、香りもない。白身の魚っぽい。家の者にそのことを言うと、「オヒョウかなんかじゃないの」と、どうでもよさそうな答えが返ってきたが、オヒョウは大きさが違う。
「おいしいアジ」と抽象的なコピーはいかにも怪しいではないか。
その後も、家の者が時々他のスーバーでもアジフライを買ってくることがあったが、どれもこれも真アジとは違う。
そんなことが1~2年続いてからだろうか、あるとき家の者に「もうアジフライは買わなくていいよ」と伝えた。
それから数年たってからだろうか、スーパーでは「真アジ」と表記したアジフライが売り場に並ぶようになった。
それにしても、「おいしいアジのフライ」と謳った魚の正体は何だったのだろうか。本物のアジではなかったことは確信している。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。