【御意】- 現代に使いたい日本人の感情、情緒あふれる言葉
時代劇や時代小説で、殿様から言葉を頂戴した武将が、「御意(ぎょい)」とひと言答える場面がある。
この場合の「御意」は、「御意のとおり」の意から、目上の人に対して同意・肯定を示す返事の言葉として用いられた。「ごもっとも」「おっしゃるとおり」に相当するもので、
「御意にござります」という言い方もされたが、多くの場合、「御意」一言で言い切る。
「御意」はそもそも、「貴人や目上の人などを敬って、その考え・意向」をいう語。御意のとおりという意から、目上の人に対して、「同意・肯定」を示す返事の言葉として使われた。
現代人の語感では、目上の人など立場が上の人に対して、「御意」と省略し、体言止めするのは上から目線のように感じられるだろう。それがなぜ、用いられたのか。
評論家の谷沢永一さんによると、そもそも武家の間では長話は禁物であり、君臣の間であろうと、士と士の間であろうと、よほどの大事でない限り、相手の言葉を復唱しないのが心がけとされた。
殿様や上役に対しては、聞き返すことも非礼とされ、「御意」の一言ですませた。一度聞いてすべてを頭に入れるのが臣下の心がけであったという。
さて、今の時代、「御意」という時代がかった言葉を使えるかどうか。
米倉涼子主演ドラマで、遠藤憲一扮する医者が、「御意」と返事するのが話題となり、
ネットでこの医師は「御意男」と呼ばれた。
現代でも宴席では使えるかもしれない。若い女性が年配の上司に対しては、「御意」と返事すると、面白いではないか。上司も笑うしかないと、笑って、あるいは喜んで、受け止めてくれるかもしれない。若い男性社員も、この言葉を使ってみるとよいが、もちろん、相手を選んだ上でのことである
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。