東 雑記帳 - 正反対・真逆・真反対
真逆(まぎゃく)という言葉、個人的には苦手で、一度も使ったことはない。
「まぎゃく」は、正反対の意味で使われる俗語であるが、使用頻度は今では正反対をしのいでいるのではないか。
全国紙の記事にも見かけるし、アナウンサーも使う。
「まぎゃく」という言葉が登場して、二十数年になるか、あるいは三十年近いのだろうか。
最初の頃、某流行作家が週刊誌の対談で使っていたし、他にはかつての大歌手が使っていたのを覚えている。いつの時代も、流行の新しい言葉を使いたがる人がいるものだ。
この言葉が気になるのは、漢字で「真逆」と書くことにもある。「真逆」は、「まさか」の当て字だったからである。今も辞書で「まさか」を引くと、当て字で「真逆」と書くと補足してある。
それでは、「まぎゃく」の見出しは立っているのか。まだ載せている辞書はないから、今も俗語扱いなのだろう。
正反対という言葉に類するものにもう一つ、「真反対」という言葉がある。
物心がついて以来ずっと、「正反対」は使わず、「真反対」を使ってきた。それが正しい言葉であると思っていた。
そのことにはたと疑問を持ったのは、今から十年ぐらい前だっただろうか。いくつもの辞書にあたったが、「真反対」が見出しとして載っているのはない。愕然とした。
それから数年後。故郷に帰って幼馴染みと飲んでいるとき、その彼が「真反対」という言葉を使ったのだった。生まれ故郷では、「真反対」が普通に使われていたのだろうし、今も使われているようだった。
それからまた二、三年たってからのこと、朝のワイドショーの司会をしている某男性アナウンサーがこの「真反対」を使っているのが耳に入った。
彼の出身地とぼくの出身地は全然違う。
「真反対」は方言だろうが、その勢力地図を知りたいものである。
文:東/茂由 ライター
1949年、山口県生まれ。早稲田大学教育学部卒。現代医学から東洋医学まで幅広い知識と情報力で医療の諸相を追求し、医療・健康誌、ビジネス誌などで精力的に取材・執筆。心と体、ライフスタイルや環境を含めて、健康と生き方をトータルバランスで多面的に捉えるその視点に注目が集まる。